【読書感想】学問のすすめ

題目 現代語訳 学問のすすめ
著者 福沢諭吉(訳:斎藤孝
出版 ちくま新書

要約
 人は皆平等で、学問の有無によって差が生じる。学問を通じて個人が形成され、その個人が集まって国家が形成される。そのため、個人、国家がより豊かになるためには学問を積極的に行うことが必要である。
 世の中で独立したと認められるのは、住居を得て、手に職を持ち、食に困らなくなることではない。学問を納め、世のため人のために貢献できるようになって初めて独立したと言える。
 では、学問とは何を行えば良いのか。学問の内容は実践的である必要があり、いくら本を読んでもその内容が実際に活かされるものでなくてはならない。本人の糧になっていない、または実生活に活かせていないとなると、それは学問をしているとは言えない。経済学、物理学だけでなく、人付き合い力、判断力、計画力等、日常で必要とされる様々な能力に向き合い、高め、実生活に活かすことができて初めて学問を納めたと言える。
 日本が西洋の国々に負けない国力を手に入れるためには、まさに学問が必要とされており、国民の一人一人がこのことを自覚して取り組まなければならない。

 

感想

 当時の時代背景がありありと伝わってきて、明治時代の人々がどのような志を持って生きていたのか、または生きようとしていたのかが想像できた。また、今の日本があるのは、著者の福沢諭吉をはじめとし、当時では何歩も先の存在であった西洋を横目に見ながら愚直に学問に取り組んできた人々のお陰なのだと心が熱くなった。
 本書を通じて、学問が全ての土台になるのだと改めて感じた。学問が個を豊かにし、国も豊かにする。今の日本では積極的に学問に取り組めている人は多くいるのだろうか。これから日本が成長していくためには、学問の大切さについて改めて国民全員が再認識し、共通認識を持って取り組んでいく必要があるのではないかと思った。

【読書感想】コンビニ人間

題目 コンビニ人間
著者 村田沙耶香
出版 文春文庫

要約

 幼少期から「普通」ではないと周囲から言われていた主人公は、大学在学中にオープニングスタッフとしてコンビニでアルバイトをはじめ、36歳になるまで働き続けていた。主人公自身は、周囲から普通ではないと言われていたため、自分は普通ではないのだと自覚はしているものの、何が普通であるのか、どうすれば普通になれるのかが分からずにいた。そのため、普通とされる人の言動を真似してみたり、アドバイス通りに行動することで、「普通」の仮面を被り、コンビニ店員として生きていた。

 ある日、コンビニアルバイト店員として、白羽という男が採用された。この男は35歳独身、無職という肩書きであり、いわゆる「普通」とはされない立場であった。白羽は、普通でない人が人間社会の群れから排除される現代の仕組みに不満を抱く一方で、結婚して職につき、「普通」の人間になることを望んでいた。

 主人公と白羽は「普通」ではないという点で共通しており、両者とも「普通」であるためにはどうすればいいか模索していた。結婚を周囲に匂わすために同棲までもした。

 最終的に主人公は、白羽に誘導される形でコンビニアルバイトを辞め、就職活動を始めたが、主人公の体は完全にコンビニ店員として成り上がっており、コンビニで働くことが彼女の全てであった。そして自身の想いに逆らわない形で、これからもコンビニ店員として生きていくことを決めたのであった。

感想

 世間の「普通」とされいることに自分を合わせながら生きるか、「自分の想い」に素直に生きるか、考えさせられた。

 主人公は「普通」ではないが、そのことに対して何か周囲から言われることについてそれ程気にしていない一方、白羽は世間の目を気にする傾向がある点が、両者の違いのように思った。作品にも描写されている通り、「普通」でないことに対して、周囲は色々と言いたがる。特に日本社会ではその色が強いと思う。みんなが同じ方向を向いて、進んで、その群れから外れるものは除外される。個性が尊重される時代になったとはいえ、その傾向はまだ残っていると自分は感じる。では、その中で個性を尊重し、自分の考えに素直に生きていくためにはどうすればいいか。それは、ある意味「鈍感」になり、自分を持って周囲の声に過剰に反応しないことが必要なのではないかと、この小説を通じて思った。

【読書感想】自分の頭で考える読書

題名 自分の頭で考える読書
著者 荒木博行
出版 日本実業出版社

読書期間 2022/11/6 - 2022/12/1

 

なぜ読もうと思ったか

 自分のコミュニケーション能力、知識、思考力を増加させるため、読書を習慣化したいと考えた。そして、読書をするに当たって、自己流の読書では効果が薄いのではないかと思い、まずは読書法について書かれた本を読みたいと考えて、本書を手に取った。

 また、「自分の頭で考える」というタイトルにも惹かれた。仕事中にもこの「考える力」は必要と感じており、それを読書を通じて鍛えたいと考えていたため、本書を読むことでそのヒントを得られるのではないかと期待した。

要約

 読書は余白が沢山あり、その余白を自らの頭で埋めようとする。その余白を埋める工程で自ら考えたり、問いを発生させたり、想像力を働かせたりする。この工程は文字であるからこそ体験できることであり、読書の醍醐味である。

 自分の頭で考える読書をするためには、読書中に常に問いをもつことが重要である。読書には「正解を知っている、認識合わせの読書」「問いがあり、その正解を見つける読書」「問いを見つける読書」の3パターンがあり、先頭から順に難易度が低い。そのため、最も自分を成長させてくれる読書は「問いを見つける読書」であり、こちらを積極的に行うことで「考える力」を育ててくれる。とはいえ、読書に対してそこまで身構えたり、真面目になる必要はなく、あくまで読書は楽しむもの。その時々の気分に合わせて気力があるときは「問いを見つける読書」をすればいいし、仕事で疲労が溜まっているときなどは「認識合わせの読書」をすればいい。

 全体を通じて、なぜ読書はいいのか、より良い読書をするためにはどのように読書に向き合えばいいのか、について記載されている。

参考になった内容

・余白があるからこそ自ら考える。

・読んだ数に拘らない。冊数や読書速度に拘ると、深い読書の妨げになる。

・「つまりどういうことか」を考え、物事を抽象化して考えることで共通項や本質を発見できる。

・今の自分には合わないと思ったら、読むのを辞めてもいい。ただし、それは今の自分に合わないだけかもしれない。後々、読むべきタイミングを見損なわないために、その本の概要だけでも記録に残しておく。

・理解できたことだけではなく、理解できなかった内容も記録に残しておく。そうすることで、その内容を眠らせておくことができ、ふとした瞬間に理解できたりする。